月平均気温の経年変化を考慮した一雨降水特性の時系列予測モデルを開発し、全国の11地点に適用するとともに、この予測モデルに、表面流出タンクを3段直列タンクに並列で付加した流出モデルをリンクして、各月ごとの5日平均流出量の積率を推定する方法を開発した。さらに、半旬単位の推移確率行列を用いて数値解析的に貯水量確率分布及び空水確率、条件付き空水到達時間の積率を推定する実用的計算法を開発した。 吉野川・早明浦ダムを対象に、前述の3つの方法をリンクし、渇水流況に対する貯水池操作ルールの検証を行った。その結果、将来、渇水確率は高くなることが明らかとなった。このような渇水流況の悪化に対処するには、貯水池操作ルールとして、給水制限開始時期、段階的節水率、さらには新規用水量と既得水利量の給水制限率配分の更新も必要になることが明らかとなった。また、九頭竜ダム流域を対象に、日平均気温情報を用いて積雪・融雪をほぼ再現でき、かつ流出量を降水の線形応答関数で表現できる積雪・融雪流出解析モデルを、前年度開発した並列タンク付加モデルを基に開発した。 河川の流況には、その水源かん養地域である、河川上流の森林の状況が大きく関係している。即ち、森林の洪水低減機能には、降水日の遮断蒸発特性が、森林の渇水緩和機能には、遮断蒸発特性の外に晴天日の蒸散特性が関係する。したがって、日遮断蒸発量及び日蒸散量を年蒸発散量から分離する方法を開発し、宮城県花山ダム流域を対象に10年間の日単位流況シミュレーションを実施し、河川流況に与える、気候特性、降水特性及び森林状況の影響について検討した結果、流況に対する降水量の影響が最も大きく、次いで森林状況(遮断蒸発)、気温の順であることが明らかとなった。
|