波打ち帯の漂砂と地形変化の外力となる流速場の特性に関する研究では、波浪時系列に含まれる長周期波成分と遡上波の相互干渉に着目して考察を行った。ここでは、96年に電力中央研究所で行われた大型水槽実験の膨大な多点同時計測データを用い、上記課題の解析・検討を行った。その結果、遡上波の時系列は個々の波の時系列より、沖から伝播する長周期波によって支配されることが明らかになった。遡上波の大きさも長周期波の振幅と良い相関を示すことがわかった。また、波打ち帯の流速場は、遡上波先端については長波理論で説明できるが、第2波以降は戻り流れの影響が大きく、流速場の記述には別なモデル化が必要であることがわかった。 波打ち帯の漂砂に関する研究では、波打ち帯に固有の特性である砂浜斜面内の浸透・滲出の影響を考察した。ここでは一様勾配斜面上に置かれた単一砂粒子運動の数値モデルに浸透・滲出効果を組み込み、移動限界シールズ数、移動可能粒子数、局所漂砂量の算定式を導いた。引き続き、非定常浸透問題としての定式化より、砂の粒径と地下水位、外力の遡上波形を入力として漂砂量を算定する数値モデルを検討した。 以上、昨年度と本年度の本科学研究費の補助を得て、波の不規則性・平面2次元性・砂浜への浸透性等を考慮に入れ、波打ち帯における流速場と漂砂・地形変形の特性について多くの成果を得た。本現象は強い非線形性を持つ流れで、遡上端付近では移動境界値問題となり、砂層内の浸透流との接続も特異性を持つ。本研究で解明が不十分な課題もいくつか残されており、引き続き今後の研究課題としたい。
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