研究概要 |
筆者はすでに非線形連成振動方程式を導きその基本的な特性を確認するとともに,孤立波の破波が計算の中で自然に表現される可能性を指摘している.本研究ではこれをさらに進め,(1)斜面上の破波が連成振動方程式によってどのように表現され,特に破波点がどのように求められるかを明らかにするために,種々の数値計算をパーソナルコンピューター上で実施した. しかし,水底の影響を強く受ける領域に波の主要部分が進行するにつれ,数値的な不安定が生じ始めることが判明した.この数値不安定は波の谷の部分でより顕著であり,明らかに破波によるものとは異なる.したがって,数値計算上の問題と考えられる. 数値計算において,数値的な不安定が生じる原因としては(i)通常差分方法によるもの,(ii)CFL数の設定に関わるもの,(iii)行列式の解を求める際の打ち切り誤差の影響などが考えられる.また,本研究では連成振動方程式と呼ばれる楕円型の方程式と非線形時間発展型の方程式形との組み合わせた方程式系によるものであることから,方程式自体が有する数学的不安定も可能性として考えられる。 現在(ii),(iii)に関してはその可能性を打ち消すに足る数値計算結果を得ており,今後(i)および数学的不安定について検討を加え,安定した計算が出来るようなアルゴリズムの開発を急いでいる.
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