本研究は、自動車運転者の注視対象の選択行動を通じて、ドライバーの注視態度の評価と、そうした注視態度の遠因ともなっている道路交通環境の評価を目的としている。 そこで平成8年度は、次の2つについて研究を行った。1つはドライバーの注視態度の基礎的データとして、さまざまな安全対策がとられている高速道路における注視点データの収集と解析である。他の1つは、実走による調査と、走行映像をモニターによって提示する室内調査との整合性に関する研究である。後者は、実走による実験が交通事故等の危険から困難を伴うことと、一方において、室内実験ではCGを用いることによって、さまざまな交通状況が提示できるというメリットがあることから、今後研究を進めるうえで、室内実験の有効性や適用範囲を明らかにする必要性があるためである。 実走実験と室内実験の整合性に関する研究では、対象別の注視時間や、注視対象の種類、注視点の移動パターン等、多方面からその有効性について比較検討を行った。その結果、室内実験では、運転の現実感が少ないためか、実走よりも対向車などの危険な対象に過剰に反応する傾向はあるものの、交通安全上必要な情報の入手状況としては、統計的にほぼ実走と同じ傾向が得られた。 高速道路における注視点調査からは、大型標識や、ゆずり合い車線を設置した区間におけるドライバーの注視点分析を行い、情報の入手地点の変化やその後の注視対象の変化などから、各種対策工の評価、課題の整理を行った。なおこの注視点データは、平成9年度の注視対象選択モデルの構築にも使用する予定である。
|