米国で発展した交通重要マネジメント(TDM)は、企業ベースTDM施策と呼ばれ、企業(雇用主)が従業員に様々な奨励策・非奨励策を提供して、従業員の交通行動を変化させようとする手法である。わが国でもTDM施策の導入が図られてきたが、官主導であり、企業ベースは発展していない。特に、相乗りはわが国になじまないとするのが通説である。そこで、地方都市長岡市に立地する企業(事業所)を対象として全従業員の通勤交通調査を実施し、企業ベースTDM施策として相乗りとバス利用をとりあげ、個人の通勤交通手段変更の可能性とその交通混雑緩和への効果を評価することが目的である。 通勤交通手段を自動車1人乗りから相乗りとバスに変更する場合について、コンジョイント分析法を用いて意識(SP)データを収集し、個人モデルを推定した。TDM施策の組み合わせによっては、現在自動車で通勤している人の約3割が相乗りあるいはバスに転換することが明らかになった。個人モデルのパラメータに表れた異質性を考慮して、性別・年齢の個人属性によってセグメンテーションを行った。 次に、長岡都市圏自動車OD調査を使用して、対象となるすべての通勤トリップに対し、TDM施策実施後にどちらの交通機関を利用するかをシミュレートすることにより、TDM実施後のOD表を推定した。相乗りでは、通常の施策を行うだけで約17%の転換が起こり、朝7時台の交通量が約6%減少した。バス利用では、転換率は9%と少ないものの、全体交通量は約6%減少した。これらのOD交通を道路ネットワークに配分した結果、自動車の走行速度は約1km/h上昇し、信濃川東西の横断は約2分短縮することが示された。
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