米国で発展した交通需要マネジメント(TDM)は、企業ベースTDM施策と呼ばれ、企業(雇用主)が従業員に様々な奨励策・非奨励策を提供して、従業員の交通行動を変化させようとする手法である。わが国でもTDM施策の導入が図られてきたが、官主導であり、本格的な企業ベースTDMはあまり発展していない。特に、相乗りはわが国になじまないとするのが通説である。そこで、地方都市長岡市に立地する企業(事業所)を対象として全従業員の通勤交通調査を実施し、企業ベースTDM施策として相乗りとバス利用をとりあげ、個人の通勤交通手段変更の可能性とその交通混雑緩和への効果を評価することが目的である。 通勤交通手段を自動車1人来りから相乗りまたは路線バスに変更する場合について、コンジョイント分析を用いて意識(SP)データを収集し、個人モデルを推定した。次に、長岡都市圏自動車OD調査を使用して、対象とする通勤トリップに対してTDM施策導入を想定して、マイクロシミュレーションによって交通手段を選択し、TDM導入後の時間帯別OD表を推定した。そして、朝7時台のOD交通を道路ネットワークに配分し、自動車交通量の変化を分析した。 バス利用では、TDM施策として駐車場課金を想定すると、朝7時台に転換率は10%となり、全体交通量は約7%減少した。信濃川断面の交通量は、最大で17%の減少がみられた。一方、相乗りでは、TDM施策の組み合わせ(相乗り優遇策、1人来り通勤に対する駐車場の課金)により朝7時台に約17%の転換が起こり、全体交通量が約5%減少した。信濃川断面の交通量は、最大で14%の減少がみられた。これらの結果は、相乗り通勤の抵抗が過小評価された可能性は残っているけれども、企業ベースの相乗りシステムの確立が優先されねばならないことを示唆している。
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