本研究は、サービス化・ソフト化、グローバル化をはじめとする経済社会の構造変化が地域間の人口移動に及ぼす影響を分析し、今後の都市機能整備のあり方を明らかにすることを目的としている。平成8年度は研究の初年度として、我が国の都道府県及び主要都市を対象とし、人口移動パターンの分析手法を開発するとともに、都市機能の集積状況について基礎的分析を行った。 まず、人口移動パターンの分析に関しては、人口の社会移動、旅客流動、宿泊観光移動等の我が国で利用可能な地域間交流データを用いて、移動パターンの背後にある地域構造を統計的に分析する手法を開発した。本手法は、移動パターンの形成にグラビティ・モデルを仮定し、多次元尺度方によって潜在的な地域間距離を推定するものである。そして、人口移動や旅客流動を用いた分析の結果、提案した手法が移動パターンの分析手法として有効であることが明らかになった。 また、都市機能の集積状況に関しては、都道府県と主要都市における産業機能の集積状況とその時系列的変動を分析した。具体的には、事業所統計調査や工業統計表のデータを用いて、ハイテク型工業、対事業所サービス業、情報サービス業、調査・広告業等の高次都市機能に関連した産業業種の集積状況を、ソフト・シェア分析、レート・シェア分析等の地域分析手法によって検討した。さらに、分析の結果得られた高次都市機能の指標と人口の社会変動との関係を回帰分析等によって分析し、産業機能の集積と人口変更との関係を明らかにした。
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