本研究は、サービス化・ソフト化、グローバル化をはじめとする経済社会の構造変化が地域間の人口移動に及ぼす影響を分析し、今後の都市機能整備のあり方を明らかにすることを目的としている。平成9年度は研究の最終年度として、平成8年度に開発した潜在的地域間距離の推定手法に改良を加えるとともに、1960年を初年次とする1990年までの5年毎7時点を対象として、46都道府県を再集計した14地域単位で分析を行った。 まず、潜在的地域間距離の推定法に関しては、研究で用いる地域間人口移動データが移動の発生量、集中量、及び地域間移動数のすべてを備えた完全なODデータであることから、二重制約型の空間的相互作用モデルに基づく推定法に改良した。この結果、人口移動の背後にある地域の潜在的位置関係を、同一地域内々の移動数と潜在距離を考慮しながら推定できる汎用的な分析モデルが構築された。 また、本研究では人口移動に大きな影響を及ぼす都市機能として就業機会格差を取り上げ、1960年〜1990年の30年間における14地域間の格差の推移をシフト・シェア分析やレート・シェア分析等の地域分析手法を用いて検討した。さらに、就業機会格差と人口移動の関係を集計タイプの人口移動モデルによって分析した。この結果、わが国の地域間人口移動では第3次産業業種の就業機会が大きな影響力を持っており、特に近年になって、金融・保険業、卸売業、先端的サービス業等の中枢性の高い第3次産業の影響力が強まっていることが明らかになった。 最後に、以上の2年間の研究成果をふまえて、わが国の各地域及び都市における高次都市機能の集積状況を比較検討し、人口の地方定住を促進するための都市機能整備のあり方を考察した。
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