研究概要 |
本研究では,人口の社会移動から見た我が国の地域構造の特徴を分析するとともに,都市や地域における産業機能集積と人口の社会移動との関連を検討した。 研究では,まず1955〜90年の都道府県人口及び地域間人口移動データを用いて,地域人口と地域間人口移動の長期的動向を検討した。この結果より,戦後日本の地域人口変動では,人口数や移動数に占める大都市圏,中でも東京圏のシェアが増大しており,人口変動における大都市圏の影響力が拡大したことが示された。 次に,地方圏の26中枢・中核都市を対象として,産業機能の集積構造をレート・シェア分析を用いて検討するとともに,各都市における人口の社会変動との関連を統計的に分析した。その結果,地方中枢・中核都市における成長業種は,高度加工組立型工業,卸売業,先端サービス業であり,これらの業種の集積が人口の社会変動と関連していることが明らかになった。 最後に,1955〜95年の40年間を対象として,我が国の地域間人口移動の背後にある人口移動空間を推定するとともに,地域間人口移動モデルによって,就業機会の地域間格差と人口移動との関連を分析した。分析結果から,我が国の人口移動空間は長期的に安定していたこと,地域間人口移動には卸売業,金融・保険業,不動産業,先端サービス業といった中枢性の高い第3次産業の就業機会が大きな影響を及ぼしていたことが示された。 また、本研究による知見から,人口の大都市圏集中を抑制し地方定住を促進するためには,中枢性の高い第3次産業の地方分散が必要であり,地方圏においてこれらの産業の受け皿となる都市基盤を整備していくことが今後の地域整備課題と考えられる。
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