研究概要 |
近年,週休二日制の定着から来る余暇時間の増大や所得水準の向上に伴うライフスタイルの変化,マスメディアによる観光情報サービスの充実などによって観光需要は増加している.さらに,一世帯当たりの自動車保有台数が1.58台という今日の車社会においては自家用車の持つ機動性,快適性,便利性などの理由により観光交通の約4割を自家用車によるものが占めている. しかし,自家用車による観光の増加は,騒音,排気ガス,振動などによる地域の生活環境の悪化や,スカイラインやスーパー林道などの幹線道路整備による自然破壊や景観破壊といった問題を引き起こしている.また,休日の観光地には過剰に車両が流入し,観光地周辺では著しい渋滞が生じている.これらが観光行動の制約になり,観光地の魅力自体を低下させる大きな要因の一つとなっている.これらの問題を解決し,快適な観光行動を保障するために,その観光地が許容できる観光客数の入れ込み数制限や自動車の流入規制などの各種の交通需要管理が必要になると考えられる. 本研究では,観光地の観光活動の適正水準を表す合理的と考えられるいくつかの観光容量の定義と,その値を推計する方法を提案することを目的とした.その中で,適切な観光活動水準と環境容量水準を制約とする観光容量の定義とその推計法を開発した.さらに,全国観光交通実態調査データを用いて阿蘇地域を対象とした観光容量の推計計算を行い,提案した定義の妥当性と本推計方法の適用可能性の検討を行った.
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