研究概要 |
1.本研究は,混雑した状況下における歩行者交通を対象とし,歩行者の流動データを収集・分析した結果を基に,群衆の形で移動する歩行者の流動シミュレータを開発することを目的とした. 2.8年度は対象を階段の歩行者流動にしぼり,駅構内の階段部において歩行者交通流の観測を実施し,撮影されたビデオ映像を基に歩行者交通流の交通容量の分析を行っている.その結果,交通容量の値を新たに評価したほか,歩行者流と自動車交通流との交通流特性のアナロジーを見いだすことができた. 9年度は対象を平面部の歩行者交通流動について調査分析を行った.歩行者流動に影響を有する歩道の有無,歩道幅員,路面状態等の歩行環境に着目し,現地調査によって現状把握と問題点の抽出を行った.さらに,歩行者の流動を考慮した交通流シミュレータの開発を試みた. 4.歩行者交通流に対する歩行環境に関しては,現地踏査に加えて利用者や道路管理者等へのインタビューを実施した.これから歩道の物理的な確保や路面整備のハード面,及び運用方法等のソフト面の問題点を抽出し,あるべき姿を考察している.歩道の構造ではこれまで安全面の優位性からマウントアップ型が理想的と見なされてきたが,バリアフリーの考え方からフラット型が主たる構造になりつつあることが明らかになった.また,景観配慮のために採用例の多いブロック舗装に利用者から平坦性の面で否定的な意見も聞かれた. 5.歩行者を含め交通事故が平面交差部で多いことから,我が国では適用例の少ないロータリー交差点の実態把握と今後の適用に関する考察も合わせて行った.その結果,全国で27カ所のロータリー交差点を確認することができた. 6.歩行者交通流動のシミュレーションに関しては,自動車の交通流シミュレータにアドオンする形で開発を試みた.その結果,歩行者,および自動車交通流の実測データにかなり合致した再現結果を得ることができた.
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