研究概要 |
近年「福祉のまちづくり」に見られるようにこれまで移動制約者層とされてきた高齢者・障害者に配慮したまちづくりの概念が各地で見られるようになった.これまで外出の制限されていた高齢者・障害者はこれらの対策と生活様式の変化とともに,よりハイモビリティになるものと思われる.車椅子利用者も今後はこの方向に向かっており,活力あるまちづくりを構築してゆく必要がある.本研究は,車いす利用者の立場からみた歩道整備について考えることを目的とした.まず,実際車椅子利用者はどのような意識を持って歩道上を通行するのかについて把握するために,車椅子利用者を対象とした意識調査を実施した.つぎに,車椅子が歩道に混入することによって,歩行者の速度にどの程度の影響があるのかについて分析を行った.これより,車いす利用者からみた歩道整備のあり方について考察することができた.得られた知見として, 1.アンケート調査から,「歩道」,「交通機関」,「ターミナル」の3つは車いす利用者の外出を低下させる要因として考えられる.とくに,歩道に関しての問題点として,「歩道幅員の狭さ」,「路面の凹凸」,「路面の傾斜」,「路上の障害物」,「溝ぶた」といったものが挙げられた. 2.実際の歩道に車椅子を走行させたときの実態調査より,歩道を車椅子が通行することにより,歩行者の速度は約4.5%低下することがわかった.また,歩行者速度-密度からのアプローチにおいて,本研究の分析では正の相関が認められた.また,歩行者が車いすを追い越す場合の回避幅について分析したところ,歩行者が歩行者を追い越す場合よりも前方で回避を開始しており,歩道幅員拡幅の必要性を考察することができた.
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