本研究の目的は、ドライバーの運転時における視覚錯誤のメカニズムについて考察するものである。研究は2年間を計画しており、初年度に当たる平成8年度は、運転時おけるドライバーの視覚環境の認知が運転行動に及ぼす影響を明らかにするため、小人数による走行実験を行った。さらに、約80名のトラックドライバーを対象に道路勾配の認知に関するアンケート調査を実施した。以下に得られた知見を示す。 1)運転時、ドライバーの視野に入る交通密度(台/100m)とその密度に対する混雑度の認知との関係は対数の関係である。一方、走行速度(km/時)とその速度に対する認知との関係は線形の関係である。 2)交通混雑に対する認知と自車の走行速度に対する認知との関係は指数関数で示される。車間距離を大きく取って安全な運転をするドライバーは密度に関する認知より速度に関する認知を重視している。一方、車間距離の小さいドライバーは、認知の段階で速度に対する認知そのものが小さい者と、認知はしているが行動に結びついていない者がいる。 3)車間距離の取り方に影響を及ぼすものは、速度以外には被験者の個人差によるものが大きかった。 4)被験者のトラックドライバーの約3割が道路勾配の認知に対して誤った経験を持っている。その誤った経験をした道路は高速道路や一般道路と広範囲にわたっている。 最終年度に当たる平成9年度は、道路勾配に問題がある道路を対象に現地調査を行い、現地の状況を室内で再現し、被験者による心理実験を行い、ドライバーが視覚環境の認知の仕方とその問題点を明確にする。
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