研究概要 |
本研究は,冬季観光交通による交通渋滞問題を取り上げ,TDMの観点から渋滞対策を検討したものである.なお,事例研究としては,新潟県湯沢町を対象とした.同地域は,上越新幹線と関越自動車道の開通により関東方面へのアクセスが向上し,その結果年間を通して多くの観光客が同地域を訪れるようになった.特にスキー客は年々増加傾向にあり,年間約800万人が同町内にあるスキー場を利用し,中でも関東方面からの客が全体の約85%を占めている.また同地域の特徴としては,自動車利用による日帰り客の比率が高いため,結果として週末や休祭日に自動車交通が集中し,高速道路とそれにアクセスする一般道路の交通渋滞問題が大きな社会問題化している.本研究では,これらの交通渋滞問題をTDMの観点から以下に示すような3つの政策の効果を分析している.1つは,交通量の分散の観点から,道路交通情報提供による帰宅時間の分散の効果,2つ目は,交通容量の増加対策としてのチェーン着脱場の整備効果,3番目は交通量の削減対策としてのP&BRシステムの導入効果である.なお,これらの政策の効果を分析するため,交通流動シミュレーションモデルの作成を行い,各々の評価を行った.その結果によると,チェーン着脱場の整備が最も効果的な渋滞対策であることが分かった.交通情報提供による渋滞対策もそれなりに効果的であるが,現状の情報提供には利用者側から見た場合,必ずしも利用しやすいようなシステムにはなっていないことも明らかとなった.P&BRシステムの導入は,駐車場の規模等を考えると,十分可能性があることが分かったが,駐車場から各スキー場までのバス利用のためのアクセス時間の短縮が不可欠であることを示した.
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