実験室規模のモデル帯水層内に形状及び性状の異なる電極を埋設し、種々の通電条件における脱窒性能について実験的検討を行い、以下のような知見を得た。なお、実験には略0.02mg-TP/Lのリン濃度を含有する大学の井戸水に硝酸Naを溶解させたものを用いた。 1.通性嫌気性菌を接種した砂質帯水層内に電極を埋設して直流電流を印加することにより、帯水層内の硝酸イオンを窒素ガスまで還元除去することができる。ここで、脱窒量は電流値の増加につれ増加するが、電流値がある程度以上大きくなると電流値によらずほぼ一定となる傾向にあった。 2.帯水層の脱窒速度は、電極性状あるいは電極配置に影響された。すなわち、炭素電極を用いた場合には通電量に応じて硝酸イオン除去率は0〜90%で変化し、また安定した脱窒処理が行われたが、金属電極を用いた場合では電極配置によって脱窒反応が進行する場合としない場合とがあった。ここで、金属電極の間隔が大きいほど硝酸イオン除去率は上昇する傾向にあった。 3.本研究の脱窒法は直流電流の印加とその調整のみによって脱窒反応を制御でき、優れた処理操作性と制御性を有していると考えられた。ここで、電極間電圧は数V、消費電力は除去窒素量当たり0.04〜0.06kWh/g-Nと小さく、風力や水力などの自然エネルギーの利用が可能である。 4.微生物増殖に伴う帯水層の閉塞は、実験期間中観察されなかった。したがって、従来の他栄養性微生物を用いた原位置脱窒法に比べて優れている。
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