硝酸汚染が最も深刻な浅層地下水等を対象とし、このような箇所に予め電極を埋設し、電解水素を帯水層内に注入する新しい原位置脱窒法を提案した。先ず、実際の地下水あるいは帯水層のような貧栄養下で脱窒反応が進行するのかについて検討した結果、リン酸塩無添加条件でもH_2の供給によって長期間安定した脱窒処理が可能であることが分かった。また、微生物増殖による帯水層の閉塞は起こらず、水素の利用は特に帯水層等の貧栄養条件下の浄化に優れていることが分かった。次に、脱窒処理の高効率化を図るために電極の形状と配置等について検討した結果、脱窒効率は電極形状とその配置に大きく影響され、特に、金属電極を地下水流れ方向に配置すると分極によって帯水層内のpHがアルカリ側に大きくシフトし脱窒反応が阻害されることが分かった。したがって、帯水層が電場の影響を受けないような電極配置(例えば電極を流れに対して直交して配置)にすること等が有効であると考えられた。一方、帯水層内の硝酸イオン濃度分布や電位分布を表す二次元数理モデルを構築し、実験結果と比較した結果、帯水層内の脱窒反応は系内の硝酸イオン、水素ガス等の移流、分散及び泳動過程に大きく影響されることが分かった。また、自然エネルギーを原位置脱窒法に利用する場合の可能性について、3つのケーススタディー結果を示した。本研究の原位置脱窒法に要する電力は、地域によっては市販されている風車あるいはソーラーパネルを用いて充分に得ることができると考えられた。
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