本研究は、高度処理にも対応できる高性能小型合併処理浄化槽の合理的な設計法を確立するために、平膜浸漬型膜分離活性汚泥法における膜モジュール部の流動特性を解明し、また汚泥の付着・堆積過程を明らかにし、曝気量や膜間隔などとの関係を求め、膜設置間隔の合理的設計値を提示することを目的として、実験的・理論的検討を行ったものである。得られた主要な成果は以下にまとめられる。 まず、汚泥堆積過程を記述する因子として、平衡汚泥堆積量、汚泥堆積速度、汚泥堆積開始時間という因子を見出し、平衡汚泥堆積量は、せん断力と逆比例するという関係を得た。実験により得た関係式は、曝気流中のろ過及び懸濁液クロスフロー流中のろ過において同様であり、ろ過形態によらない統一的な関係を見出すことができた。汚泥堆積開始時間は、曝気流中のろ過において、せん断力だけではなく膜間距離に依存するという傾向が見出された。また、膜間距離が狭くなるほど汚泥堆積開始時間が短くなるという傾向を得た。平膜においては、せん断力が変わらないにも関わらず汚泥堆積開始時間が短くなるのは、汚泥フロックの乱れによる膜間距離の移動度に対して膜間距離が相対的に短くなるためとした定式化をおこない、実験結果をよく説明することが出来た。このことにより、膜設置間隔の影響を定量的に明らかにすることができ、汚泥堆積開始時間を十分長くするような設計因子が抽出できた。さらに、懸濁液クロスフロー流虫では、膜近傍の層流境界層が発達して行くことによって、膜面の汚泥堆積量に分布が生じ、また遷移領域において緩い堆積が生じることが示された。境界層の発達を抑制するためには膜セグメントを流下方向に分断する法が得策であり、それに膜面積の減少とのトレードオフで最適膜設置間隔が決まる。このような設計は、特に間欠曝気ろ過を採用する場合に重要となる。
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