都市ごみ焼却飛灰の無害化・再資源化処理およびばいじん(飛灰)上でのダイオキシン類のde novo合成などの複雑な反応機構を明確にするには重金属の含有量だけでなく、化学形態の情報が必要となる。本研究では飛灰中の重金属の化学形態を、X線回折分析、熱力学的平衡計算、X線光電子分光分析、逐次抽出法の4つの方法によって推定した。対象とした重金属は、飛灰中の含有量、毒性などを考慮して亜鉛、銅、鉛、カドミウムとした。 X線回折分析は、飛灰中重金属に対しては含有量が小さいことから同定することは難しく、有効な方法とはいえなかった。飛灰表面には揮発性が高い重金属が濃縮し、比較的強度が得られたため、X線光電子分光分析により飛灰表面での重金属の状態分析を行い、化合形態の同定をおこなった。逐次抽出法では重金属の化合形態そのものよりも捕捉されているマトリックスとの関係を基本とした存在状態を知ることを目的とし、蒸留水態、イオン交換態、炭酸態、酸化物態、有機物態、残留物態の6つの形態に分画した。さらに、試薬についても同様方法で形態を6分画することにより得たデータから、飛灰中の重金属の支配的な化合形態を推定した。 飛灰中の亜鉛は、飛灰粒子表面付近では、塩基性炭酸亜鉛や硫酸亜鉛の形態で、飛灰粒子内部では酸化物の形態で存在していることが推定された。銅は酸化銅(II)が支配的な形態であると考えられた。鉛は塩化物、炭酸塩、酸化物、水酸化物、硫酸塩などの多くの形態が推定され、一つの形態が支配的であるとはいえなかった。カドミウムは、乾式および半乾式排ガス処理の飛灰では主に水酸化物または酸化物で存在し、湿式排ガス処理飛灰では硫酸塩あるいは塩化物で存在していることが推定された。 X線光電子分光分析、逐次抽出法のそれぞれ一つだけでも推定は可能であったが、両法が補完しあうことにより、より確度の高い推定が可能であると考えられた。
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