1.腐植物質共存下での溶液中Alの存在形態に関する検討 アルミニウムと市販のフミン酸ナトリウムおよび日本腐植物質研究会頒布の標準腐植物質(フミン酸、フルボ酸;褐色森林土より抽出)との混合液をサンプルとし、ポストカラム誘導化法によってアルミニウムの形態分析を行った。その結果、腐植物質濃度の増加に伴い、溶液中で植物毒性の強いAl^<3+>濃度は低下すること、溶液系では土壌より抽出したフミン酸の代用とした市販のフミン酸ナトリウムを用いてAlの存在形態を推定することが可能であること、フミン酸とフルボ酸では、フミン酸の方がアルミニウムに対して毒性を低下させる働きが強いこと、等の知見を得た。 2.フミン酸が森林土壌の酸性化に及ぼす影響に関する検討 京都府北桑田郡京北町の杉林にて採取した森林土壌(A層)を対象に、フミン酸ナトリウムを添加した模擬酸性雨による溶出実験(バッチ実験、カラム実験)を実施した。その結果、模擬酸性雨に含まれるフミン酸ナトリウム濃度が高いほど、流出液中アルミニウム濃度の急激な上昇が始まるところでの流出液pHが低くなること、模擬酸性雨に含まれるフミン酸ナトリウム濃度が高くなっても、流出液中の塩基性陽イオン濃度の変化傾向に明確な差異は見られないこと、流出液中でフミン酸と錯体を形成したと考えられるアルミニウム濃度は流出液pHの影響を受けること、等の知見を得た。 3.森林床の存在を考慮した土壌酸性化評価モデルの構築 模擬酸性雨を用いた土壌カラム系への適用の妥当性がある程度検証されている岸野のモデルを本研究のカラム実験に適用し、バッチ実験で得た知見を基に簡便な2通りのモデル(アルミニウムの錯体形成率が溶液pHに依存するとするモデルAと溶液中錯体アルミニウム濃度が溶液pHに依存するとするモデルB)を作成し、フミン酸と錯体を形成するアルミニウム濃度を推定した。その結果、カラム実験結果とシミュレーション結果とを一致させるにはfBC0を変化させる必要があること、多くの場合シミュレーション結果はアルミニウムについて過大評価すること、等を示した。
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