1.腐植物質共存下での土壌酸性化に関する実験的検討 森林土壌にフルボ酸およびフミン酸を含む模擬酸性雨を用いたカラム実験の結果、土壌有機酸は模擬酸性雨による土壌からのアルミニウムの溶出に影響を与え、流出液pHが高い実験初期から連続的にアルミニウムが溶出することを示した。 2.森林生態系での諸プロセスを考慮した土壌酸性化の将来予測 これまでに申請者らが構築した修正SMARTモデルをさらに発展させ、O層とA層の2層で構成される2層モデルを新たに構築するとともに、モデル中に酸の負荷・緩衝に関する森林生態系の諸反応プロセスを組み込み、カラム実験に供試した対象土壌の今後100年間での酸性化の将来予測を行った。日本の森林のおける種々の報告値を参考に、森林生態系において酸の負荷、緩衝に関与する諸プロセス(有機態窒素の無機化、アンモニア態窒素の硝酸化成、窒素と塩基性陽イオンの根からの取り込み、有機酸の生成)に関するパラメータ値を設定した。設定した各パラメータ値を基本とし、森林生態系の各プロセスによる土壌酸性化が平均的に進む、最も遅く進む、最も早く進むの3パターンのシナリオを設定した。酸性降下物量についても4パターンのシナリオを設定した。両シナリオを組み合わせ、合計12タイプのシナリオについて、今後100年間の土壌酸性化を予測した。その結果、生態系の各プロセスによる土壌酸性化が平均的、最も遅い、とシナリオ設定したとき、酸性降下物中の硝酸、硫酸濃度が増加しても、土壌の酸性化はおこらず、アルミニウムの溶出も見られなかった。これは、O層の交換性陽イオンによる酸緩衝の寄与が大きいと考えた。生態系の各プロセスが土壌酸性化を最も速く進めると設定したシナリオでは、今後100年間に土壌酸性化は進行し、アルミニウムの溶出が見られた。
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