研究概要 |
本研究では、人為的攪乱を受けていない自然条件下にある土地にて土壌を採取し、土壌間隙水中及び土壌中の元素を種々の分析手法を用いて分析し、鉛直分布を調査することにより、土壌中における元素挙動の解明を試みた。今年度は、京都大学原子炉実験所敷地内において、地表より80cmの深さまで土壌を11層に分けて採取した。土壌中の厳密な意味での水溶性の元素を抽出するため、超高速遠心分離器にて、土壌から土壌間隙水を直接分離・採取した。分離条件は、12000rpm(pF3.99)で1時間を2回行い、2回の抽出水を合わせて土壌間隙水とし、土壌微細粒子の除去のため0.45μmのフィルタでろ過後、ろ液を水質の測定に供試した。主要成分である陰イオン(Cl^-,NO_3^-,SO_4^<2->)と陽イオン(Na,K,Mg,Ca)を測定した。 土壌間隙水の水質の分析値より、陽イオン総量と陰イオン総量の当量比、水分比(含水比)さらに全水分に対する遠心抽出水分の割合(抽出率)を算出した。その結果、陽イオンや陰イオンの総量濃度は、深さ15cm以深において深さ15cmより上部の濃度の4分の1程度に減少していることがわかった。陽イオンのうち、特にKは、深さ15cmより上部と下部で1桁近く濃度が異なり、ついでCaが数倍の濃度差を示した。陰イオンでも同様の傾向があるが、特にNO_3^-が深さ15cmより上部と下部で1桁近く数値が異なる大きな濃度の変化を示している。この原因としては、有機物の分解に起因するK,Ca,NO_3^-の溶出が考えられた。また、下層部における濃度の減少は植物根による吸収が一因として考えられた。下層部の主要イオンはNaとCl^-であり、濃度的にはかなり小さいが地下水水質と同様の傾向を示した。土壌間隙水のイオンバランスは問題なく、電気的中性はほぼ保たれていると考えられる。イオンの当量比も深さ15cmより上部と下部で傾向が変化しており、上部では陰イオンが陽イオンに対して少なく上部では陰イオンが陽イオンに対して多い傾向がみられた。遠心器による水分の抽出量は水分全体の50〜60%であった。
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