研究概要 |
建築構造物には、直交する二方向の耐震壁が連続して配置され、L形の平面形状となる場合が少なくないが、このような立体耐震壁に関する研究は非常に少なく、地震時における強度や変形性状は未だ明らかにされていない。本研究では、鉄筋コンクリートL形断面耐震壁の二方向終局せん断耐力を実験的に明らかにするために、実大の約1/4程度の試験体模型を作製し、L形断面の図心位置に鉛直力(軸圧比で0.1)を加えながら、二方向から水平力を加えるせん断破壊実験を行った。二方向加力は、3台の電気油圧式アクチエータを水平面内に配置してパソコンに接続し、任意の一定方向に変形もしくは荷重方向を定めて加力できるシステムを構築して、水平面内の各種の方向に変位漸増の繰り返し加力を行った。試験体数は、等辺のL形壁が柱断面積を2種、壁高さを2種に変化させた13体、不等辺のL形壁が2種6体および比較実験用の単一平面壁3体の計22体である。本研究で得られた主な成果はおおよそ次のとおりである。 1,L形断面耐震壁の各壁板方向の終局せん断耐力は、変形方向の各壁板とのなす角度が45度に近くなると10数%小さくなるものの、二方向せん断耐力相関図は概ね四辺形で表される。 2,各壁板に平行な方向の終局せん断耐力は、単一平面壁にほぼ等しいが、直交壁が引っ張りフランジとなる場合の耐力はそれよりも大きくなる傾向がある。
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