研究概要 |
鋼構造軸組筋違構造に多用される単一山形鋼筋違が、新耐震設計法に基づいて保有耐力接合されているにも拘わらず、筋違母材の全断面降伏を待たずに接合部第一ボルト位置の断面欠損部で破断する現象を解明することを目的として、基礎的な調査・実験に加え、3次元弾塑性接触問題のFEM解析を行った。 初年度は、高力ボルト引張試験モデルを解析し、ボルトの滑りと応力伝達特性の変化を明らかにした。 最終年度は、75mm・75mm・6mm(SS400)の単一山形鋼からなる引張筋違モデルを解析した。軸組は剛部材からなる3m・4mのピン接合骨組とし、ガッセットプレートは9mm(SS400)とした。高力ボルト(F10T M16)の数は、3,4,5の3ケースとした。これにより、筋違方向に直交する横面内並びに構面外の変形及びねじれ変形など、二次応力の発生要因が考慮される。ボルト数3のみ非保有耐力接合である。加力は一方向加力とした。以下の注目すべき現象が明らかとなった。 1.筋違が全断面降伏する過程において、ボルト数の剛性、降伏耐力、変系に対する影響は小さい。 2.筋違軸力と層間変形角の関係は、概略、弾性-弾塑性-塑性の3折れ線で表される。 3.初期剛性は、高力ボルトの数が多いと上昇するが、計算例での違いは6%である。 4.層間変形角1/1200付近で、第1ボルト穴周辺は応力集中により降伏する。 5.第1折れ点は、層間変形角1/670であり、第1ボルトの滑り開始時である。接合フランジは降伏状態に入る。 6.第1折れ点から第2折れ点への過程で、高力ボルトによる力の伝達は第2ボルト以降へと移り、層間変形角1/400前後で順次滑り始める。断面降伏は、変形と共に突出フランジへ進展する。 7.第2折れ点は、筋違全断面の降伏荷重時である。層間変形角はボルト数により若干変化し、1/240〜1/300である。 今後更に、(1)ボルトの偏心量、(2)部材の降伏応力レベル、(3)圧縮筋違、(4)繰り返し載荷などの影響を解析する。
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