本研究の成果として、まず、研究代表者らが提案しているせん断変形を3次元せん断ゆがみ関数で評価する薄肉はり理論にもとずく薄肉テ-パ-はりの有限要素解析法を提案した。本解析法は、はりのたわみおよびねじり角を3次関数で、せん断変形を1次関数で近似する有限要素法であり、要素間の境界条件の矛盾を解消するために定式化の過程で変位自由度の縮約を行う。本解析法は、はりの長さ方向だけでなく、はりの断面も有限要素で分割する必要があるため、通常のはりの解析法に比較して解析自由度が多くなるが、応力レベルまで非常に良好な解析精度が得られる。本研究では、既往の研究との比較により、本方法の有効性を検証し、また、本方法により、はりのテ-パ-度と固定端近傍の応力のshear-lag現象の相関を調査した。その結果、テ-パ-度を上げることにより、固定端近傍断面のshear-lagの効果は小さくなり、また、高層骨組を薄肉はりに置換したモデルのように、せん断変形が顕著に現れる場合は、隅部の応力集中度を軽減できることが明らかになった。 次に、以上の解析法にもとづく薄肉はり構造の形状および剛性分布の最適化を行う解析法を開発した。最適化の目的は、荷重作用時の仮想仕事量として定義されるコンプライアンスの最小化とし、制約条件は構造体の体積とした。設計変数は各断面の大きさおよびはり膜面の板厚分布とした。最適設計問題は逐次線形計画法によって解いている。そして、本方法を高層ビルの意匠計画、構造計画段階で利用することを目的として、高層骨組を薄肉はりに置換した例題によりその有効性を検討した。その結果、本方法は、高層ビルの構造計画では、ブレースの効果的な配置計画や、部材種別のグル-ピング等への利用が可能であり、また、意匠計画においても、デザインのコンセプトを得ること等に利用できる可能性が示された。
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