研究概要 |
大きな地震動が発生したときに建物の地震被害を皆無にすることは経済性を考慮すると難しい。社会的に大きな混乱を引き起こさないためには大災害とならない恕限度の範囲に被害量を収める必要がある。地震の社会的反応が新聞報道に表れていると考えて、戦後の全ての被害地震について地震報道の全紙面に対する比を地震報道率と定義して調査した。その結果、地震報道率は死者数との相関が高いこと,大きな混乱を起こさない地震の報道は2週間で終わること、などが分かった。新聞の紙面数の影響を補正して被害との相関を調べた結果、死者数で数十名、建物全壊数で数百棟を境にして、それより大きな被害では推定式とのばらつきが小さく、個々の地震の特性は余り関係しないことが分かった。 どこに地震が発生しても地震被害を一定にするためには定常的な地震活動を反映した地震ハザードが必要である。地体構造区分を反映した面震源モデルを設定して、定常的な地震活動を反映する安定した地震発生パラメータを推定した。これらのデータと減衰曲線を用いて確率的な手法で地震動の年最大値の極値分布を求め、観測結果と比較してその妥当性を確認した。同様な方法で全国の再現期待値とその変動係数と再現期間換算係数のマップを作成した。 被害量は震源域の建物数に関係するので、建物の集中度が人口密度に比例すると考えて、人口密度により区分した都市モデルを設定した。被害量を一定にするためには建物の破壊確率を建物密度に反比例させればよいので、地震荷重の割り増しを地震都市係数と定義してその値を求めた。平均的な都市部の人口密度を基準として8倍から16倍の集中度であっても、地震活動度の違い、建物強度や地震動強さの確率モデルによらず、地震都市係数を2程度にすることで一定の被害量に収めることが可能であることを明らかにした。
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