研究概要 |
水の入った円筒シェルの水平振動応答に線形理論からは予測できない応答が発生する現象が生起する。この現象の発生するメカニズムを解明するために理論・実験両面から検討を行ってきた。今年度も新たな供試体を作成し、分数調波振動が分岐する振動数領域、および発生する振動の大きさに及ぼす外力加速度の大きさを検討した。 また、今までの研究成果を取りまとめる検討を行った。各供試体の応答からその都度固有振動数を特定して来た。しかしながら、発生する現象を総合的に検討すると、固有振動数の特定が適切ではなかったと判断されるケースが生じた。初期不整が存在しない円筒ならば、各周方向展開次数に対応する固有振動数は連成しないのであるが、フィルムを丸めて作成する円筒シェルにおいて初期不整は必ず存在する。このため、固有振動数に対応するモード間に連成が生じて、特定しにくいケースが発生する。二つ以上の振動モードが重なっている応答も生じている。 データを洗い直して、各供試体の応答に発生した振動モード、特に分数調波振動の不安定領域の大きさを検討した。この振動の不安定領域には、いくつかの振動モードに対応する固有振動数と外力振動数が密接に関係していることが明らかになった。周方向展開次数N=4,5,6の振動モードに対応する固有振動数の2倍の外力振動数近傍において、この振動モードを有する1/2倍の分数調波振動が生起する。これが最も生起しやすい不安定領域である。これに周方向展開次数N=1の主共振領域が関係する不安定領域も存在する。また、周方向展開次数N=4の振動モードに対応する固有振動数の3倍の外力振動数近傍にも不安定領域が出現する。これらが相互に連成する不安定領域がある。関係する振動モードが多くなるほど出現する機会は少なくなる傾向がある。
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