兵庫県南部地震(1995年)では上下方向の加速度が大きく、想定していなかった軸力の変動が鉄筋コンクリート(RC)骨組の外柱および中柱のせん断挙動に悪影響を与えた可能性がある。そこで本研究では圧縮から引張りまでの広範囲に渡って変動する軸力が、RC柱のせん断強度およびせん断性状に与える影響を実験によって解明することを目的とした。試験体は4体とも同一で柱断面を250mm×250mm、せん断補強筋比を0.39%、シアスパン比を1とした。実験変数は軸力の大きさおよび変動軸力の載荷経路であり、一定圧縮軸力(軸力比0.49)、一定引張り軸力(柱断面積に対する軸力比0.29)、水平力を加えたのちに所定の軸力を加える変動軸力、および水平力と軸力とを同時に加える変動軸力の4種類とした。コンクリート圧縮強度は275〜298kgf/cm^2であった。 実験の結果、4体ともせん断破壊した。軸力が引張りから圧縮まで大きく変動することにより一定軸力の場合よりも、引張り軸力時には38%、圧縮軸力時には14%それぞれせん断強度が低下した。これは引張りおよび圧縮軸力を繰り返すことにより斜めせん断ひびわれ面の平滑化が生じて、骨材の噛み合い作用によるせん断伝達能力が低下するためと考えられる。ただし復元力特性においては、軸力が変動しても引張り・圧縮それぞれの領域では一定軸力の時と同様の傾向があった。変動軸力の載荷経路が異なる場合には、せん断強度はほぼ同じであったが同一変位時のせん断力は水平力と軸力とを同時に加える場合の方が小さかった。水平変位一定で軸力を引張りから圧縮へ変化させるとせん断力は増加し、新たなせん断ひびわれが発生した。逆に軸力を圧縮から引張りへ変化させるとせん断力は減少した。
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