水平力を加えたのちに所定の軸力を加える変動軸力、水平力と軸力とを同時に加える変動軸力、引張り一定軸力および圧縮一定軸力を受ける鉄筋コンクリート(RC)柱試験体4体に逆対称曲げせん断加力する静的実験を行なった。詳細な測定結果を用いてせん断強度、せん断伝達機構の変化などを検討し以下の結論を得た。 (1)変動軸力を浮けるRC柱の引張り軸力時のせん断強度は一定軸力下のそれの62〜75%であり、同様に圧縮軸力時のせん断強度は一定軸力下の86〜89%であった。変動軸力を受ける柱では圧縮、引張り軸力時ともにせん断強度が低下するが引張り軸力時に特に顕著であり、引張り軸力を考慮できない荒川mean式、日本建築学会(AIJ)終局強度型指針式とも実験値を過大評価した。引張り軸力を考慮しているAIJ靭性保証型指針式は引張り一定軸力時では安全側の評価になった。 (2)異なる加力経路の変動軸力を与えたRC柱では圧縮軸力下のせん断強度はほぼ同じであったが、引張り軸力下では軸力とせん断力とを同時に載荷する場合のせん断強度が軸力とせん断力とを交互に載荷する場合よりも17%小さかった。 (3)軸力が変動することによって影響を受けるのは主にアーチ機構であり、トラス機構の負担せん断力は軸力の変動にかかわらず一定であった。 (4)せん断力に対するトラス機構とアーチ機構との負担割合はせん断耐力の推移とともに変化し、さらに軸力の変動によっても変化した。また軸力を変動させながら水平力を加えた場合の両機構の負担割合は、変位一定で軸力変動のみの場合と軸力一定で水平力を加える場合との両方の変化の影響を受けて複雑に挙動した。 (5)測定結果を用いた柱主筋付着応力度とせん断補強筋負担力とからトラス機構のコンクリート圧縮束の角度を求めて、実測した圧縮主ひずみの角度と比較したところ、引張り軸力下では両者がほぼ一致した。そのためひびわれを超えた圧縮応力度の伝達は困難と思われ、このことが引張り軸力下ではアーチ機構が形成されにくい理由である。
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