研究概要 |
本研究は,多雪地域における大規模構造物の屋根上積雪荷重評価方法の確立を目的に実施した。これらの評価方法を確立するために,大規模構造物を対象とした連続的な屋根上積雪状況の観測,模型雪を用いた風洞実験による屋根上積雪状況の把握等を実施した。これらの結果を要約すると,以下のようになる。 1)大規模構造物を対象とした連続的な屋根上積雪状況の観測をみると,屋根勾配が約10度以上であれば,滑雪現象が発生し長期間にわたり屋根面に雪が堆積することがないことが明らかとなった。特に,屋根勾配が20度以上になると滑雪現象が顕著に発生しやすいことも明らかとなった。即ち,屋根上積雪荷重として作用する期間が短期間であることが明らかとなった。 2)勾配を持っている大規模構造物の場合,上述のように荷重として作用する期間が滑雪現象の発生に支配されることから,各種屋根葺き材における滑雪条件を明らかにすることで合理的な屋根上積雪荷重評価が可能となる。この滑雪現象の発生は,外気温の推移と極めて相関性が高く,屋根葺き材によって異なるものの概ね-2〜0°Cの範囲で発生する。即ち,屋根上積雪荷重は,これらの外気温を指標に評価が可能と考える。 3)屋根上積雪荷重評価に滑雪現象の発生状況が大きく影響を与える。本研究で実施した屋外観測結果をみると,滑雪現象は屋根葺き材の劣化に大きく支配されることが明らかとなった。屋根葺き材の劣化と滑雪現象との関わりは今後の問題となる。 4)模型雪を用いた風洞実験で種々の屋根形状における積雪状況を検討すると,屋根形状が複雑になるほど堆積量が増大し,滑雪現象が発生しにくい状況となる。即ち,多雪地域における大規模構造は,屋根雪処理に合理的な屋根形状を考えながら計画を進める必要があると言える。
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