研究概要 |
日本における暴風災害の多くは,数年に一度の割合で日本を襲う大型台風によってもたらされている。この様な台風における被害の大部分は,大きな突風によって一瞬のうちに生じる。従来、風による建物の振動解析は,風速変動を定常確率課程と見做して評価されてきたが,大型台風来襲時に観察された突風の記録を見れば,突風時における建物の振動を評価するにあたって,風速変動を定常過程と仮定することは妥当とはいえない。本研究では,突風時における建物の風による過渡的振動を正しく見積もるための方法を,風洞実験及び時刻歴数値解析等によって開発した。 実測結果により突風時には風速が急速に立ち上がり,その後徐々に風速が現象する。このような風速の急激な立ち上がりは,フェンスの後流の流れと類似したものであり,フェンスから適当な位置に模型を置くことによって,自然風と似た突風を模型に作用させることができる。突風時に建物に働く風力は,風上面では時間遅れのある線形1次系システムで近似できるが,屋根面な側面などでは,2次系システムで見られるような突風時に共振を伴った風圧のオーバーシュート的変化が観測され,突風と継続時間が風力にかなり影響していることが明らかとなった。 突風時の建物の応答は,突風の形状と連続する突風の数に大きく作用される。建物が線形応答系で風力が定常課程の場合には,このような突風の作用は不規則変動理論によって,周波数領域での従来の応答解析に帰着されるが,風洞実験によって明らかにされたように,突風時の非定常効果は応答に非常に大きな影響を及ぼし,突風を不規則変動と見做す従来の方法では,この効果は表し得ないことが明らかとなった。以上の事柄を踏まえ,突風の来襲をポアソン過程とし,突風時の応答感度解析により,突風時の風荷重とそれによる応答を導く新しい方法を提案し,その確認を行っている。
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