研究概要 |
本研究の目的は,鋼筋違の弾塑性挙動及びエネルギーの吸収能を把握し,併せて,局部座屈に誘発される軸部破断の破断機構を明らかにすることにある。過去6年間にわたる一連の研究の成果を基に,本年度は,実験変数の中,細長比をより緻密に設定しその影響を調べた。 試験体は,冷間ロール成形角形鋼管および冷間成形円形鋼管からなる両端ピンの単体の筋かいで,実験変数は,細長比および幅厚比及び焼準の有無とした。また,載荷経路も実験変数とした。試験体の総数は12体である。載荷は繰返し軸方向載荷で,軸方向伸縮量および亀裂の発生に到る箇所のひずみ履歴を計測した。とくに,本年度は,亀裂発生箇所を対象に応力塗料による計測を試み,その結果,平面ひずみ状態で亀裂の発生に到ることを観察した。 以上の実験から,次の結論を得た。 1 破断までのエネルギーの吸収能は,細長比よりも断面形状及び幅厚比に大きく依存する。 2 筋違や柱を想定した通常の範囲の細長比では,細長比が小さいほど破断までのエネルギーの吸収能が高い。細長比が大きくなるに従って,エネルギーの吸収能は一旦低下して,また上昇する。 3 亀裂が発生する箇所のひずみの振幅は,局部座屈の発生以後急激に大きくなる。局部座屈の発生は細長比が大きいほど遅く,従って,亀裂の発生までの載荷ループ数は,細長比の大きいほど多くなる。 4 荷重-変位曲線は,細長比が小さいとき紡錘形となり,大きいときにスリップ形となる。破断までのエネルギーの吸収能が最も小さい中間域の細長比の存在は,細長比が大きいとき,荷重-変位曲線の痩せ細りを破断までのループ数で補うためである。
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