本研究は、角形鋼管からなる部材が正負交番の軸力を受けて、局部座屈断面で破断に到るときの力学的機構と支配因子を明らかにし、鋼筋かい・鋼柱等の軸力部材の安全性の向上を図ることを目的とした。 実験は2つのシリーズからなる。シリーズIは、細長比が極く小さくて曲げ座屈をともなわずに局部座屈が発生し破断に到る軸力部材を対象とした。このシリーズの試験体は冷間成形角形鋼管□-100×100×tからなる単体の軸力部材で、幅厚比(板厚)の細長比(長さ)を実験変数とした。得られた結論は以下のとおりである。 1.局部座屈領域は、試験体の板厚に依存し、長さには依存しない。板厚が薄く幅厚比の大きい試験体ほど、局部座屈領域は短い。 2.変形は主に局部座屈領域で生じ、局部座屈領域は試験体の長さに依存しないことから、また、局部試験体の長さに比例する変位で載荷履歴を制御したことから、長い試験体が早期に破断した。 3.全塑性荷重P_Pと完全弾性体を仮定して算出したP_Pに対応する変位δ_Pで無次元化した履歴吸収エネルギーの推移は、A・L・σ_Yの関数となる。ここでA、L、σ_Yは、試験体の断面積、長さおよび耐力である。 シリーズIIは、細長比が大きく曲げ座屈と局部座屈が連成して生じる試験体を対象に、局部座屈後破断の力学的メカニズムを追求することを目的にした。試験体は焼準した角形鋼管である。載荷の全履歴をひずみゲージで追求し、また、ひずみの分布を見るために載荷の要所で応力塗料による計測を実施した。得られた結論は、以下のとおりである。 1.き裂発生箇所のひずみは平面ひずみである。 2.応力-ひずみ曲線のモデルを用いて、き裂発生箇所の応力履歴を推定し、その履歴曲線を骨格化したところ、き裂は一様伸びをはるかに越えた時点で生じていた。
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