本研究の一貫した目的は、局部座屈が生じた鋼部材が正負交番の軸力を受けて局部座屈断面で破断に到るときの力学的機構・支配因子を明らかにすることにあった。昨年度までは、曲げ座屈と局部座屈が連成して生じる軸力部材を対象としてきたが、本年度は、研究の最終年度として、曲げ座屈と連成しない局部座屈断面での破断を研究対象とした。すなわち、ごく短い軸力部材である。 冷間成形形角形鋼管を試験対象とし、□-100×100×t(t=3.2、4.5、6mm)からなる総数4体の試験体である。実験変数は幅厚比の他に試験体長さとした。この実験結果と平成6年度の実験結果を併せて検討したところ、次の結論が得られた。 1) 載荷サイクルの進展とともに、局部座屈領域には変形が集中し、き裂の発生を誘導する。 2) 局部座屈が曲げ座屈と連成するかしないかによる荷重ー伸縮量関係の差は小さい。 3) 局部座屈の発生は、幅厚比が大きいほど早い。また、載荷条件が同じならば、破断の早い遅いは局部座屈の発生時期に支配され、座屈の発生以後の破断までの載荷サイクル数は、幅厚比によらずほぼ同じである。 4) 短い柱を角形鋼管で設計する際には、幅厚比を大きくしないことが重要である。詳細な研究が必要であるが、幅厚比の恕限度は20程度と思われる。ところで、短い柱は、全長で変形したとしても、吸収できるエネルギーは小さい。弾性域に止めて、他の部材でのエネルギー吸収を考えるべきと思われる。
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