研究概要 |
建物中の連層耐震壁下層部は,地震時に層せん断力が集中し,その基礎部には浮き上がり・ロッキング変形を生じることがある。また,耐震壁が偏在配置された建物は,ねじれ振動が発生する。本研究は,地震応答時における耐震壁基礎部の浮き上がり挙動と,建物各層の偏心率との関係を考察するものである。耐震壁の形状,配置位置,弾塑性力学特性,支持地盤等の影響を考慮した浮き上がりの非線形挙動を調べ,基礎部に浮き上がり変形を生じる連層耐震壁が,偏在配置されている連成構造のねじれ応答性状に与える影響ついて検討した。 1.連層耐震壁が偏在配置された一軸偏心建物の剛心,耐力中心に関する評価パラメータの現状を整理した。 2.鉄筋コンクリート造の低層建物において各層の重心と剛心が一致する場合を基本として,連層耐震壁の配置位置を変化させた一軸偏心建物を設定した。耐震壁基礎部の浮き上がり変形を考慮した弾塑性増分解析を行い,連成構造の終局耐力,ねじれ変形と浮き上がり変形の関係などを調べた。各フレーム構面の応力再配分を検討した結果,浮き上がり後には上層部において偏心率がかなり減少することがわかった。 3.浮き上がり連層耐震壁が偏在配置された建物の固有周期,各層の回転中心位置を考察し,各次モードの並進性,回転性を明確にした。また,地震応答時の各フレーム構面ごとの応力分担性状を明らかにした。 4.耐震壁の基礎部に浮き上がり変形を考慮した構造のモデル実験のための試験体設計を行った。地震応答時の基礎部底面と支持地盤の局部的な衝突に関する振動現象をモデル化することが今後の課題である。 基礎部に浮き上がりが生じる耐震壁を含む建物のねじれ解析で明らかになった耐震設計上の問題点をさらに追求,検討し,実用設計にその成果を反映させることが重要不可欠である。
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