制震構造の究極の目的は、大地震時の安全性の確保にある。しかしながら、現在アクティブ制震の主流となっているAMD方式では、ストロークや駆動力の限界から、そのほとんどが大地震時に停止する設定がなされている。可変フィードバックゲイン制御を適用することで、性能限界を考慮しながら、大地震時にあっても稼動しつづけるAMDとすることは可能であるが、AMDの機能限界を考慮するため大地震時には大きな制震効果は期待しにくい。 大地震時のAMDの制震効果を補う目的で、低層階に設置した履歴ダンパを主に大地震時の制震を想定して設計し、AMDとの複合制震システムとすることで、大地震時には主に履歴ダンパで、中小地震時には主にAMDによる可変フィードバックゲイン制御での制震が可能となることを、シミュレーションにより確認した。引き続き、振動台による模型実験を計画中である。 また、摩擦ダンパの降伏点を制御することで、地震規模に合わせた効率的で、省エネルギー型の制震が可能となる、可変摩擦ダンパによるセミアクティブ制御については、実験、シミュレーションによりその効果を確認している。引き続き、より本格的な実験を計画中である。 制御システムのモデル化にあたって、制震構造物として相応しい(制御対象として望ましい)モデルの構築に関しては、出力計測層の状態を反映させた低次元化モデルを、実際の高層ビルに近い構造性状をもつ建物モデルに適用し、有効な制御が可能となることを確認している。
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