横浜市ならびに周辺都市に居住する473名の視覚障害者に対して空間認知における音情報の利用に関するアンケート調査を試みた。実施に当たっては横浜市視覚障害者協会と横浜市立盲学校の関係者の協力を得て、対象者名簿の整理と調査内容の検討を行った。調査項目は空間情報とそれらの利用判断の組み合わせの74項目を主とし、属性項目を幾つか加えたものであった。これらを磁気テープに録音し、墨字と点字の依頼状をつけて平成8年10月末に郵送した。回収はその後約1っヶ月の間に返送され最終的にはその数は270となり、その視覚障害程度の分布は全盲158名、ロ-ビジョン32名、弱視75名、不明5名であった。 以上のデータを多変量解析の各手法を用いて分析した。まず因子分析により項目を集約し、誘導音、音響式信号機、車の音、歩行者の声、足音、商店から流れる音、電車の音、踏切の音に対する反応を用いて、視覚障害者を3つのクラスターに分類した。クラスター1は空間の2次元的把握に音をよく利用しているグループ、クラスター2はその利用が低く、弱視が多く、弱視以外の人でも誘導者を伴って外出する人が多く、クラスター3は2次元的把握に音を利用しているかどうかは不明であり、外出頻度が低く、外出に対する態度が消極的な人が多い。空間を2次元的に把握することは1次元的に把握することに比べ、外出時にける自由度が大きく、視覚障害者にとっては空間を2次元的に把握する手段として音の持つ情報が重要である。しかしその利用は外出の頻度と視覚障害の程度に左右される。今後は2次元的把握に資する音環境のあり方を提案していく必要があろう。 なを、これまでの成果の一部を平成8年12月のハワイで開かれた日米音響学会において招待講演として発表した。
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