本年度は「躯体蓄熱空調に関する研究会」などを開催し、躯体蓄熱の実用化に向けての問題点について検討した。躯体蓄熱を普及させていくには 1)冷房時のピークが午後にくることから空調システムの縮小化になるのかという疑問 2)運転時間が長くなることによる搬送動力費増加の危惧 3)放熱を少なくするための高断熱化による建設費が上昇することへの抵抗感などを解消する必要がある。 躯体の熱容量が蓄熱効果を発揮するには、緩やかな室温変動の許容が必要であり、従来の設定室温一定プログラムにはない巾を持った設定室温制御のアルゴリズムを持つ新プログラムは1)や2)の疑問に対し有効である。1997年6月に札幌で開かれたMEGASTOCK'97(国際蓄熱会議)でモデル事務所ビルの夜間空調機運転による躯体蓄熱の特性について、天井チャンバー吹き出し空調方式を通常の空調方式と比較しながら精算プログラムを使って解析し講演発表した。 一方、少しでも初期投資(建設費)を抑えたいとする施主に対し、安い夜間電力が適用され、ランニングコストが安くなることが説得のポイントである。研究会開催をきっかけとして電力会社では躯体蓄熱の夜間電力適用の検討を始めている。また躯体からの放熱を少なくするためには外断熱が有効であり、外断熱建築協議会の協力によりコスト比較資料なども作成した。 更に、断熱性能の向上と内部発生熱の増加した建物の熱特性を把握するため、北海道電力室蘭支店のマルチヒートポンプシステムの稼働状況と室内環境を1年間実測した。冬季間も水蓄熱槽に蓄熱が行われており、躯体蓄熱を併用することにより各種の蓄熱システムが縮小できて普及しやすくなることが明らかになった。
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