天井チャンバー吹出し空調の特長である輻射効果による居住性向上を評価するために、熱伝達率を時間変化させることが可能な放射吸収係数を用いる対流・輻射分離精算プログラムと相互輻射を近似的に考慮する相当輻射気温法を用いる実用プログラムを作成した。モデル事務所建築を使い同一の計算条件下で計算精度の検証を行ったところ両者はよく一致し、従来の総合熱伝達率法計算値は5%以上負荷を大きく見積もることを明らかにした。また作成したプログラムにより、天井チャンバー吹き出し空調による躯体蓄熱の特性について他の空調方式と比較した。昼間の平均輻射温度が最も低く吹き出し温度と室温の差が小さくなること、夜間の蓄熱効果を日中まで持続させるには、昼間の穏やかな室温変動の許容が特に天井チャンバー吹き出し方式には有効であることを明らかにした。尚、通常のダクト吹き出し空調設備を使って、昼間冷房運転と連続冷房蓄熱運転の比較実験を行った結果では連続運転時のピーク負荷は、昼間運転に比べ33%減少し、22℃位まで蓄熱温度を下げても居住性に問題がないことが分かった。 更に「躯体蓄熱空調に関する研究会」などを開催し、躯体蓄熱の実用化に向けての問題点について検討した。躯体蓄熱を普及させていくには設備技術者が持っている不安や抵抗感を解消する必要がある。特に少しでも初期投資(建設費)を抑えたいとする施主に対し、安い夜間電力が適用され、ランニングコストが安くなることが説得のポイントである。研究会開催をきっかけとして電力会社では躯体蓄熱の夜間電力適用の検討を始めている。
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