建築環境システムのエクセルギー・エントロピー過程を定量的に明らかにするとともに建築内外における物質循環の基礎理論を構築することを目的として、本年度は以下に示す四点について研究を行なった。 1.屋根散水によるエントロピー廃棄能力の地域や季節による特性を計算するための方法を検討した。夏期における東京のエントロピー廃棄能力の最大値は日中には2〜3W/(K・m^2)であり、夜間には0.5W/(K・m^2)となることがわかった。また鹿児島は東京と比べるとエントロピー廃棄能力が小さいことがわかった。 2.人体に関する無機物質の流れについてエクセルギー・エントロピー過程を計算する方法を導き、人間にとっての淡水の資源性を海水を環境とみなして定量的に把握した。人体は投入される無機物質のエクセルギーのうち95%を消費し残りを廃棄することがわかった。 3.木材生産において最も基本となる光合成について、そのエクセルギー・エントロピー過程を計算する方法を導出した。その結果、葉への入力エクセルギーはその80%が葉で消費される。残り20%のうち7%がグルコースに固定され、13%が蒸散していく水蒸気によって持ち出されることがわかった。 4.生ごみの堆肥化過程のシミュレーション方法を検討した。シミュレーションを試みた結果、家庭用の小型の堆肥化装置は、壁に十分な断熱を施せば、大型プラトンと同程の速さで生ごみが分解できることを確認した。また実験により小型堆肥化装置が、壁の断熱性の向上によって内容物温度を62℃程度まで上昇させられることを確認した。
|