建築環境システムのエクセルギー・エントロピー過程を定量的に明らかにするとともに建築内外における物質循環の基礎理論を構築することを目的として、本年度は以下に示す点について研究を行なった。 1. 現代建築の主要な材料であるコンクリートについて、生産と運用における資源の消費され方をエクセルギーの概念を用いて表す手法を導いた。鉄筋コンクリートの外壁について解析した結果以下のことがわかった。コンクリートの生産において投入される化石燃料・水のエクセルギーを100とすると、80が生産において消費される。運用において外壁が中性化現象で劣化し寿命を終えるまでに、コンクリートに固定されたエクセルギー20のうち5が消費される。外壁の仕上げ別に運用時のエクセルギー消費を比べると、タイル・モルタル・ペイント・打ち放しの順に小さい。 2. 昨年行なった生ごみの堆肥化実験のデータを用いて、家庭用堆肥化装置での生ごみの堆肥化についてエクセルギー解析を行なった。その結果、断熱性が低く電気ヒーターで加熱する装置では、生ごみのエクセルギー62Wを消費して堆肥のエクセルギー28W生産するために、化石燃料のエクセルギーが205W消費されることがわかった。これに対して高断熱化して電気ヒーターなどの補助熱源を用いない装置では、化石燃料の消費を全く伴わずに同量の堆肥エクセルギーが生産される。 3. 都市における生ごみの堆肥化とその物質循環についてエクセルギーを用いた解析を行ない、物質循環における堆肥化施設の稼働や生ごみの輸送の位置付けを明らかにする検討を行なった。解析の結果、堆肥化施設の稼働で消費される化石燃料のエクセルギーは、農地で生産された野菜のエクセルギーの12倍になり、生ごみと堆肥の輸送で消費されるエクセルギーは1/4倍になった。生産される野菜のエクセルギーに対して、輸送や機械設備の運転のために消費されるエクセルギーを少なくなるような物質循環の計画が重要と考える。
|