建築環境システム内外における物質循環について、生ごみの堆肥化とその物質循環、鉄筋コンクリート壁の生産と運用を特に取り上げ、それらにおける資源・廃物・再資源化をエクセルギーの概念を用いて定量的に検討した。以下に得られた結論を要約する。 1) 過去に行われていた東京都の堆肥化事業についてエクセルギー解析を行なった結果、生ごみの選別用の機械によるエクセルギー消費量が野菜のエクセルギー生産量の12倍と著しく大きいことが明らかになった。生ごみに関する物質循環を持続するには、生ごみの選別用の機械によるエクセルギー消費量を、野菜のエクセルギー生産量と同じか、もしくは小さくすることが重要であることがわかった。 2) 堆肥化実験の結果、高断熱化した家庭用堆肥化装置と断熱性が低くヒーターを用いた装置とでは、両者でつくられた堆肥の熟成度に差がなく、高断熱化すれば補助熱源を用いなくても十分に堆肥化できることが明らかになった。エクセルギー解析の結果、ヒーターを用いる装置では、生ごみのエクセルギー消費量の6倍に相当する化石燃料のエクセルギーが消費されていること、高断熱化装置では化石燃料のエクセルギーをまったく消費せずに、ヒーターを用いる装置と同程度の堆肥のエクセルギーが取り出されることがわかった。 3) 鉄筋・コンクリートの生産段階におけるエクセルギー投人量は、外壁の仕上げがタイル、モルタル、ペイント、打ち放しの順に大きくなり、運用段階におけるエクセルギー消費量も同じ順で大きくなった。壁の解体・生産の繰り返しの一周期が、壁の物理的耐用年数より短ければ短いほど、壁の生産に投入されるエクセルギーが大きく、またその消費量も大きくなった。これらのことから、建築空間を構成する部材に対する工夫が資源の有効利用に大きく寄与するという点で、パッシブ建築手法と共通の原理があることを見出すことができた。
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