1.基礎調査(町史)については、住宅営団の当時の計画理念と計画基準が判明したことによって、三和町住宅地の計画史上の位置づけが明らかになりつつある。すなわち、住宅営団の計画基準にほぼ添ったものであるが、第1号のモデル住宅地であったために、営団基準の前身で、住宅地についてはより濃密な近隣住区の考え方を示していた「庶民住宅の技術的研究」日本建築学会住宅問題委員会(昭和16年)が生かされていることなどである。ただし、全880戸の当初の住宅型については、未だ即時的に明らかにできておらず、今後の課題である。 2.テーマ調査1(自然環境と近隣関係)については、中央公園や遊歩道の利用率の高さに比して身近な小公園の利用者の少ないこと、しかし小公園ごとに差異が見られること、高齢者による利用の多さなど、現状が明らかになりつつある。加えて、庭、道、小公園、中央公園、用水路、遊歩道、市民農園、小学校校庭などの各種オープンスペースの変容と時代ごとの利用状況の変遷についてもヒヤリングを重ねつつあり、住宅地の人口構成による公園に対するニーズの違いに示唆されている。 3.共通調査(個人史)については、残存住宅20戸程度を特定でき、順次訪問調査を進めている。実測調査による図面の作成とともに、ヒヤリングによる原住宅タイプの特定と居住プロセスの把握につとめている。残存住宅、即ち居住継続を可能にした条件として、居住者の家族構成の特徴や補修管理への意識があげられるとともに、少数例からも、住宅地内転居の数の多さや住宅地内近居による家族ネットワークの強さがうかがわれた。 4.今後は住宅地の変容のメタニズム(計画的改変とその主体ならびに居住者による参加のあり様)とその条件について、さらに明らかにしていきたい。
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