研究概要 |
本研究は,市街地における高齢者を含めた都市内移動時の利用面と物的な整備面の両面から,歩行者のためのサインシステムの方法を構築するための基礎的研究であり,都市内主要街路の街路特性および地区特性と現状の公的サイン類の分布特性の関係を調査・分析し,高齢者対応の公的サインシステム構築のための基本的な方法を明らかにすることを目的としている。 都市内主要街路の既設の公的サイン類の分布特性を調べた結果,種類別に分布に差異があり,円滑な情報提供のための種類が不足しているなどの分布上の課題が明らかになった。さらに公的サインの種類別詳細実態調査の結果,歩行者用公的サイン類は,情報提供の多い中心市街地に分布するが,中心から離れ情報が不足する住居地区で極端な減少など,地区により分布の偏りがみられた。特に歩行移動上の重要な役割を担う歩行者用地理情報は,計画的に整備された街路では幅広く分布するが未整備街路での設置がみられないなど、街路整備の計画性が関与している。車用公的サイン類は,主な交差点近在に似通った種類が多数集中するなどの街路構造に関係した分布がみられた。 以上の結果から,歩行者の円滑な都市内移動のための公的サインには,現状の街路や地区別の分布の偏りを軽減し連係した情報を提供するためのシステム化が必要であることがわかった。そして公的サインシステム構築には,公的サイン類をはじめ多数の構成要素が集中する地区においては整理統合する方法が,また情報提供が不足している地区では車用の標識類や他の構成要素に歩行者用サインを共用・兼用する方法など,地区や街路の特性に適応できるいくつかの方法の組み合わせが有効な手段となることを導いた。特に身体的機能の低下がみられる高齢者においては,歩行空間の確保と的確な情報伝達の両面において,多種多様な公的サイン類を集約化する方法が有効な方法の一つとなりうることを明らかにした。
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