住宅政策と都市計画の連携をとりながら、それらの計画の実体化のために、市区町村が両者のマスタープランを策定すべきとの議論は以前からなされてきたが、あまり成果は得られてこなかった。 しかし1990年代に入って状況は変化した。1990年の大都市法改正による東京等の都県への住宅マスタープラン策定の義務づけ、1992年の都市計画法改正による市区町村への都市計画に関する基本的な方針(以後都市マスタープランと呼ぶ)策定の義務づけ、1994年の住宅宅地審議会答申に基づく市区町村への住宅マスタープラン策定への展開といった制度的な転換がなされた。結果的に、多くの市区町村がこの二つのマスタープラン策定に取り組むところとなった。申請者2名はこの動向を、特に東京区部を対象に実態的に捉え、またその問題点等を明らかにする研究を別個に、あるいは共同で行ってきた。 これらの経緯を踏まえ、成果を発展させるかたちで、本研究は両マスタープランの立案・策定の理論と技術に関する次の課題を実態的に分析したものである。 1. 両マスタープランの策定が一般化した今回の時期をとらえて、全国的あるいは東京特別区での策定の経緯と概況を明らかにする。 2. さらに策定実態を具体的に考察し、策定上の課題を分析する。 3. 都市マスタープランに重要な「市街地像」の意味や描き方について分析する。 これらのなかで、計画達成度、市民参加などの策定上に重要な問題も検討した。全体として、今後の両マスタープランのあり方や策定技術について有用な知見が得られたと考えている。また関連する論文を発表し、図書を刊行することができた。
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