2名の頸髄損傷者(C-6)の協力により、金沢市バリアフリーモデルハウスを利用して、駐車場での乗用車から車いすへの移乗動作、住宅へのスロープを利用したアプローチ動作、玄関および住宅内での動作、さらに機器の操作それぞれについて実験の様子ヲビデオカメラを用いて撮影した。主な撮影項目は、玄関引き戸の開閉と施錠動作、室内引き戸の開閉と通行動作、窓の開閉と施錠、洗面台における整容動作と一連の設備用具使用動作、キッチンにおける調理関連動作、キッチン設備使用動作、キッチン系家電品の取扱とコントロールボタンの操作、収納系の使用動作、ユ-ティリティーでの洗濯機および乾燥機の使用動作からなっている。撮影にあたっては2台のカメラを用いた。一台は操作の手元に向け、もう一台は動作全体を収めるようにした。この撮影方法を採用することで、体幹の傾きや上肢の有効可動域の状況を手元操作とリンクして把握する基礎データを得ることができた。これら2つの映像を一つのモニター上に並列させて映し出し「動作操作分析」をおこなった。さらに必要に応じてプリントアウトした。これと合わせて、操作上で問題が発生した機器や住宅設備の計測を行い問題に内包している数値的な要素についてもデータ収集した。被験者2名ともに、乗用車を主な移動手段として使用しており、基本的な日常生活動作は自立しているといえる。 しかし、より自然で安定した生活動作を行えることや、確実で無理のない機器の操作、といった視点から今回の調査データを分析すると、現状のバリアフリーな住宅設計や機器設計の在り方に対する改善点が多々あることを改めて確認することができた。
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