本研究は、身体周囲に構成される非接触のアキの領域という新たな概念を導入して、日常的な生活行為における動作寸法とアキの領域の関係を、特殊な写真計測法や超音波センサなどによる非接触の解析方法を応用して、その寸法特性を明らかにするものである。 平成8年度の研究計画にもとづいて、下記の研究実績が得られた。 1.各種単位空間内における多様な生活行為の洗い出しを行なった。 2.各種単位空間のマトリックスを作成して、基本となる生活姿勢と行為の関係を整理した。 3.各種行為の動作寸法について、連続的に動作解析できる写真計測を実施した。 4.従来、被験者に非接触で動作の諸寸法を連続的に測定するには、かなり煩雑な手段をとらなければならなかった。そこで、本研究では、独自に考察した特殊な写真撮影装置、現有のビデオポジション解析装置、超音波による移動位置検出装置などを駆使して、多角的に身体動作寸法や対人・対物の関係で身体周囲に構成されたアキの領域を採寸した。 5.前項の測定に並行して、対象者が自己の身体周囲(対人・対物)に構成したアキの領域の心理的な意味を探るために、極限法や調整法などによる官能検査を実施し、それらの相関の有無を検証した。 6.さらに、身体への生理的反応を知るために、本年度購入した装置「平衡機能計」によって、姿勢バランスなどのデータを補強することができた。次年度は、本年度得られたデータをもとに、実際の設計場面にも対応した実用性のあるアキ寸法の計測値にまとめるとともに、その評価法についても研究を展開させる。
|