少子高齢化、家族の小規模化・多様化、都市化、地球規模の環境問題などの課題を抱える現代社会において、ライフスタイルの選択および住居形態として参加・共生型集合住宅が注目されている。 本研究は、計画段階から意図され住まわれている参加・共生型集合住宅の物理的、非物理的環境が、生活者個人の生活の質にどのような効果を与えるのか、また、その要因について考察することを目的とした。調査事例はいずれも公的賃貸住宅であるが、計画のテーマ、計画・供給主体、計画から入居までのプロセス、入居者特性、入居後の運営・管理システムにおいて異なる特徴を持つ海外3つの先行事例をとりあげた。第一部では、参加-共生型集合住宅の概念、および第二部でとりあげたスウェーデンおよびドイツに於けるコレクティブハウジングや環境共生ハウジングなどの出現と動向、その社会的背景を明らかにした。第二部の事例調査の結果を含めた考察は以下のようである。1.物理的環境(モノ)と居住者(ヒト)、管理・運営方法(システム)は相互に響きあっていること、特に居住者により共感されるテーマやコンセプトが物理的環境に反映され、その維持管理や運営が誰にも分かりやすく開示され、居住者の主体的参加の動機を醸成する仕組みが生きていることが重要である。2.プロジェクトの始動や主導がユーザー、設計者、供給者に関り無く、実現には地域のニーズに対応した公的セクターの積極的関与が有効であるが、「共生の暮らしと環境を育て維持していくのは居住者である」ことが把握されていること。3.入居後のコミュニティの質には、単なる仕組みではなく、事業者、設計者、入居者相互の良好な信頼関係、が影響すること。4.人と環境の対話的環境は、必ずしも空間の共用化や生活の共同化を伴わなくても可能である。以上、社会的に今日的意味を持つ参加・共生型集合住宅の取組みに有用な知見が得られた。
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