前年度に引き続き、個室型特別養護老人ホームを対象として、以下のような調査・分析を行った。 1.個室内部の使われ方調査……各個室の図面採取調査や居住者への面接インタビュー調査などから、個室の使われ方や個室での生活行為、個室内での他者との交流および居住者の開口部に対する意識を分析し、各居住者にとっての個室の機能・意味を捉える。 2.共用空間の行動調査……共用空間の観察調査や地図上へのプロット調査から、共用空間で展開されるさまざまな行動・行為や交流・集まりの様子を分析することによって、居住者にとっての各共用空間の意味とその空間構成との対応関係を捉える。 3.個人の生活場面展開……居住者個人の生活を経時的に追跡調査し、施設空間に展開される生活場面を捉え、時間軸上でその様態の変化を探っていくことで、居住者が環境に馴染んでいく際の空間の意味・役割を分析する。 以上の調査を行い、入居者の環境との関わり方を時間軸上の変化として捉え、入居者の生活に影響を与える環境要素について分析を行った。共用空間に多様な場所があることによって、入居者は自分なりに場所を選択し、そこにさまざまな意味付けを行っており、その結果、入居者が一人一人が独自の生活を展開し多様な生活類型が見出された。
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