第2次世界大戦後・公共住宅の住戸型計画はその量的不足対策を背景に急速に発達し、高度経済成長期をもって完熟期を迎えている。それは食事空間と居間を公室空間(LD)とし、それにn個の個室寝室化可能室を組み合わせてnLDK型を構成し、これを狭小宅地や中高層集合住宅に需要者の住宅費(家賃・ローン支払)負担能力に見合う形で間取り化するということであった。本研究で調査した市場流通住宅の平面型において、独立住宅における1階に1〜2LDK、2階にn室という型、中高層集合住宅ではバルコニー側に2〜3室の半中廊下型でいずれもnLDKの固定化が広範に普及するしていることが確認される。しかし、これが戦後の民主化、生活近代化によるライフスタイルの変化および居住世帯の多様化と明らかな乖離を来している。この研究においてnLDKの型計画の根拠であった家族のライフサイクル概念に加えて、時代・世相を反映した居住者ニーズ、居住世帯形態の変化がライフコース概念を導入することで新しい展開の可能性が一定程度立証された。特に現今の高齢者居住形態がバリアフリー化指向、同居別居議論を越えて、高齢期のライフストーリー、ライフシナリオを居住空間の型計画に反映させると、萌芽的居住空間類型であるコレクティブハウスやグループホーム等の集住形態と連動した住戸型計画が必要であることを明らかにできた。なお、アンケートを用いたライフコースの分析と居住空間類型ニーズとの対応関係の分析は試行的な域を出ることができず、継続研究が必要となった。
|