今年度は昨年度に引き続き、戦後建築家研究の中心対象として丹下健三をとりあげ、以下の作業を行なった(他の戦後建築家についても同様の作業を徐々に進めている)。特に、彼が建築家としてのキャリアを熟成する大学時代、前川事務所での修業時代、大学院時代、そして東京帝国大学建築学科助教授として本格的な建築家として活動を始め、初期の活動の区切りとなる広島ピ-スセンター竣工期までについて集中的に調査を行なった。 1、文献調査ー彼が執筆もしくは彼の作品について紹介された文献を大学・機関等の図書館を中心に網羅的に調査のうえ、複写保存し、後学のためにリスト化を行なった。この時期の文献については非常に希少になっているものがあり、今回の調査でこれまで歴史研究上明らかになっていなかった報告書(稚内都市計画の報告書等)も、個人蔵の資料の中からの確認された。 2、図面・スケッチ類調査ーオリジナルの図面やスケッチあるいは青図などの図面類について、丹下健三事務所の全面的な協力のもと所蔵調査を行っている。これまで1960年代前半までの図面はほとんど発見されてこなかったのだが、つい最近になってオリジナルの図面が相当量存在することが分かった(特にその中の広島カトリック聖堂コンペと稚内都市計画の図面を確認した)。その他、ピ-スセンターなど建築作品の所有者が有する青図なども確認した。 3、インタビュー-丹下健三ならびにその関係者に対し、継続的にインタビューを行なった。当時の設計や施工をめぐる詳しい状況が分かったが、今後のオリジナル図面の確認とともに、さらに詳細な事柄が判明することが期待される。 4、実地調査ー丹下の作品について現存するものを確認し、順次、実地調査を行った。
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